こんにちは、松本千嶂です。
今日は「草書の書法」について少し記します。
書体には篆書、隷書、楷書、行書、草書があります(2020-08-24の記事参照)。草書は楷書あるいは行書の略体と思われがちですが、漢字の歴史から言うと隷書の速書体として生まれたものです。また楷書も隷書の速書体です。すなわち、漢字の変遷は、篆書⇒隷書⇒草書、あるいは篆書⇒隷書⇒楷書⇒行書となります。
以前の記事でも書きましたが、古来「草書は走るが如し」といわれていますが、点画が連絡の意(筆脈)を失わないように淀みなく書くことが必要です。言葉を変えれば「流暢に書く」ことが草書の生命ともいえます。また、後でも述べますが、早く書こうとするあまり、自己流の(自分勝手な)くずし方になってしまってもいけません。
草書の筆法(筆使い)
1.丸みのある筆致が出るようにする。
「因」
「河」
2.運筆に緩急(遅い早い)をつける。起筆はゆっくりと。
「百」
「山」
3.終筆は基本的には止めないで抜く。
「生」
「下」
4.直線は比較的早く、曲線はゆっくり。また細い線は軽く早く、太い線は重く遅く筆を運ぶ。
「乃」
「長」
5.肥痩(太い細い)の変化、配合をバランスよくする。
「天」
「地」
6.はねるところは総じて大きめにはねる。
「司」
「風」
7.一字の途中で穂先を直したり、墨をついだりしない。
「至」
「涯」
草書の形態
草書は「くずし字」といわれたりします。そのくずし方には一定の法則があり、自分勝手なくずし方をすることはできません。つまり、何千とある漢字の一字一字のくずし方を覚える必要があります。草書は速く書けるという利点がある反面、そういったやっかいさもあります。
しかし、例えば「青」のくずし方を覚えれば、清、靖、精といった字に応用でき、「馬」を覚えれば、駒、駐、騒等に応用できます。そんな字は他にもたくさんあります。そのことによって、百以上の字はあっという間に覚えることができます。ですから敬遠しないで取り組まれることを願います。草書はまた、変化に富んだ作品を作るにはもってこいの書体だと思います。
草書の手本
〇十七帖(じゅうしちじょう)<王羲之>
王羲之(おうぎし)の書簡を集めたもので、草書の代表的法帖とされ、草書中の絶品、書中の竜と称されています。
〇書譜(しょふ)<孫過庭>
孫過庭(そんかてい)が書論を草書で書いたもので、草書の書法を十分に表現した書で、書技を磨くのに最適の法帖です。
〇小草千字文(しょうそうせんじもん)<懐素>
懐素(かいそ)の書で、草書の千字文です。千字文というのは、四字一句、250句からなる、子どもに漢字を教えたり、書の手本として用いられた漢文の長詩です。一文字として重複する字はありません。古来一字一金の値打ちがあるという意味から、「千金帖(せんきんじょう)」ともいわれています。
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