こんにちは、松本千嶂です。
今日は、「楷書の書法」について記します。
書法とは「筆法」と「結構法」とによって構成されます。
筆法とは筆使いのことであり、結構法とは文字の形を整えることです。
筆法
筆の穂の正しい形は円錐形です。これをそのまま紙に押し当て、横線の場合は左から右へ、縦線の場合は上から下へ引くと、次のようにただの棒になってしまいます。
穂先を紙に入れる一定の方法、これが筆法です。大体斜め45度に穂を入れ、そのまま右に延ばすと「一」の字ができます。
この場合、穂の先端は線の上を通ります。終筆(書き終わり)は起筆(書き始め)と同じく大体45度に斜めにやや強く止めて左へ返せば、筆法に適った「一」となります。横に引く線を「横画」といいます。
次に縦線の場合です。
縦線は「豎画(じゅかく)」といいます。起筆は横画と同じく大体斜め45度に穂を入れ、そのまま下に引き下ろします。豎画の場合、穂の先端は線の左を通ります。
〇永字八法
古来「永」の字の中には八法が含まれており、この八法が基礎となって、あらゆる筆法が表現できるということから「永字八法」といわれています。
筆順に沿って以下に説明します。
1.側(そく)
第一画の点です。斜めに穂を入れ、終筆は穂先を点の中に収めます。どっしりとした感じを出すのがいいと思います。
2.勒(ろく)
これは「一」の字を示しますが、「永」の場合は豎画と組み合わさって短くなっています。長短により反り方が違ったりします。
3.努(ど)
先述の豎画のところで説明したとおりですが、終筆は上に返す気持ちで筆を収めます。長短により反り方が違ったりします。
4.趯(てき)
豎画の下部のはねの部分で、通常「はね」と呼ばれます。上から真っすぐ下してきた穂を斜め左下の方へ向きをほんの少し変え、そのまま鋭くはね出します。
5.策(さく)
はりのある調子で、下から斜めにはね出します。ここでも起筆は斜めに入れ、力が緩まないようにします。上掲の「永」の字では、真横にはねてしまった感があります。
6.啄(たく)
強く引き締めて、上から左下へはね出します。「左はらい」と言ったりもします。
7.掠(りゃく)
上から斜めに引き抜く筆法で、すっきりとした線にするのが良いと思います。
8.磔(たく)
微妙にうねりがあります。波のうねりのような、というところから「波法」ともいいます。また、「右はらい」と言うこともあります。
〇懸針(けんしん)と垂露(すいろ)
豎画の終筆を止めずに、下に引きぬいたもので、鋭く引きぬいたものを「懸針」、ゆっくりと引きぬいたものを「垂露」といいます。
<懸針>
(例)
<垂露>
(例)
先がもう少し丸くなった方が良いでしょう。尖り過ぎました。
曲尺(きょくしゃく)
「永」の字の第2画の曲がり角を「曲尺」といいます。横画の終筆でしっかり押え、その力を緩めずに下へ引いてゆきます。角度を変え、いろいろに応用されます。
ここまで、筆法の基本となるものを説明しましたが、長短を変え、細太を変え、傾斜を変え、反り方を変え、方向を変えてそれぞれの字に適するように応用することになります。
結構法
結構法とは、文字の形を整えることをいい、厳密には「間架結構法」といいます。間架は線と線の空き間、広さ狭さをいい、結構は線の長短や細太、反り方等をいいます。
最初に、「一」の字を正方形の中に書く場合、上の空白と下の空白が同じ広さになるように収めます。そして、この空白も「一」の字の一部と考えます。そうすると例えば「第一画」という語句を縦書きした場合、「一」の上下に空白ができ、三文字の収まりがよくなります。空白を取らなければ窮屈な文字並びになってしまいます。
次に、「国」と「口」を例に考えます。同じように正方形の中に字を書く場合、「国」は正方形全体に書きますが、「口」は少し小さめに書きます。
「口」の上下左右の空白は字の一部分と考えます。こうすることで「国」と「口」を並べて書いた場合、収まりがよくなります。「口」を「国」と同じように正方形いっぱいに書いてしまうと、「口」の方が大きく見えてしまいます。
次は、縦線が並んだ場合、横線が並んだ場合についてですが、線と線の間隔を等しくする、というのが基本です。
上掲の「車」の字(横線が等間隔)もご覧下さい。
次に、偏と旁で構成されている字で、偏と旁の高さを変えると字の形が整うものがあります。
「即」や「御」、「印」なども「卩(ふしづくり)」を偏より低くして書くと収まりが良くなります。
以上、楷書の「筆法と結構法」の一部を記しました。まだまだ多くの書法があります。書の基本(基礎)となるものです。何事もそうですが、基本は大事です。
「基本あっての創作」と心に留め、日々努めています。
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